メンコ抜き
きもの紋入れまつもとです
2月に入り、昼の時間も長くなり、日差しを浴びると春も近いと感じますね。着物姿で華やぐ町を見れる日も近そうです。
修行中の話です。夕方、その日の仕事も終わりに近づいた頃、「松本君、メンコ抜きしてくれるかな?」と命じられます。「はい、わかりました。」と仕事場の隅にある切り株の所へ。片喰30反、蔦16反、木瓜7反...
厚紙を特殊な糊で何層にも貼り合わせた板のような物を切り株の上に乗せ、紋の形をした金型で木槌を使いパンパン叩いて打ち抜く。
御誂え黒紋付
紋の形に打ち抜かれたメンコは染物店に納められ、白生地が採寸され、紋の入る場所に表と裏に糊で貼り付けられます。そして浸染(焚き染め)されます。五つ紋なら一反につき12個必要です。当時は誂染の黒紋付を毎日100反以上紋入れする会社だったので、その下仕事である「メンコ抜き」も重要な仕事。単純作業で楽しかったのですが、終わる頃には両手はジーンと痺れてプルプルしています。
そのあとに紋を描く練習です。手が震えて描けないなんて言えるはずもありません。不思議に少し経つと手の震えも止まり落ち着いた気持ちで練習ができたのを記憶しています。
初めは無地のレポート用紙で練習でした
「メンコ抜き」 呉服業界の方でも、それを見た方は少ないのでは?大切な仕事だったのだなと今、改めて感じます。
誰も知らないような数多くの職人の仕事があってこそ成り立つ着物文化。永遠に守り続けたいですね。