紋入れ一筋、百年の歴史。三代続く職人の技

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亭主のご挨拶

祖父「徳次」が金沢の地で独立し、今年で創業100周年。
金沢で着物の紋入れの仕事をしております松本守正と申します。 
私は祖父の代から続く通称紋屋の家庭に生まれました。
祖父が口減らしのため金沢の紋屋に小僧に出されたのが、私が今、この仕事をしている元となっております。「口減らしのために小僧に出された」と申しましたが、口減らしというのは、食べる口の事で、祖父の家庭は裕福ではなかった為、家計の負担を減らす目的で金沢の紋屋さんの家庭に住み込みで働きに出されたという意味です。
私は子供のころから祖父からその厳しい生活の話を聞いておりました。

高校卒業後県外からも御弟子をとっているという長野県飯田市の会社で社長宅住み込みで小僧生活を三年間過ごしました。最初は簡単な作業からさせて頂いたのですが、職人の技は見て盗めと言うだけで苦労しました。仕事をするのが一番気楽で楽しく、金沢に帰ったら自分が一番になってやるという強い気持ちを持つようになりました。




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歴史ある手法の中にも独自技術を

修行生活も終わり金沢に帰った頃から着物の生地や、特に染色方法が大きく変わり、それまでのやり方では紋入れが困難になり、父親と一緒に相談しながら仕事をしていたのですが納得できる仕上がりにならず、いろんな薬品を使うことを知っている染み抜き屋さんの力を借りたりもしましたし、できないなら他でしてもらうから返してくれと言われるなど大変悔しい思いをしました。

これではダメだと思い、今までの紋屋としての技術以上の何かを習得したいと思いました。色を抜いて紋を描くのですが、染めてある色が抜けない商品がほとんどになってきた頃で、その地色をきれいに抜く事をやってみようと勉強しはじめました。
 それまでは呉服屋さんや問屋さんは色が抜けないという商品は染み抜き屋さんでしてもらい、そのあと紋屋で描くという時間もお金もかかる事をしていたのですが、他へ出していた方々も当店に出してくれるようになりまして大変喜ばれました。

 これからは、私の仕事の良さを分かる方に見て頂く機会を増やし、他の同業者と比較していただき、いままで積み重ねてきた勉強とキャリアを生かして、その価値をアピールして「紋入れは松本へ」というブランド力を作って仕事量も増やしていく所存です。