黒紋付

お祝い事にも着用になれます

 県外のお得意様からお電話で、

「黒紋付の紋入れを3反お願いします。今日、発送しますね。」

「はい、喪服ですね。承知しました。」

 その時、喪服という呼び方はよくありませんよ。と注意されました。  

 そうなのです。「黒紋付=喪服」と思われがちですが、本来「喪服」という着物は存在してないのです。

 黒紋付に緑色の袴が印象的な宝塚音楽学校の卒業式。実は卒業式だけではないのです。四月初めの宝塚音楽学校の合格発表の日、晴れて予科正となった合格者たちは、グレーの制服と、黒紋付の着物、緑色の袴の採寸をします。グレーの制服は二年間で終わりますが、紋付と袴はタカラジェンヌである限り、長いお付き合いになり、式典やイベントに参加するとき着用されます。

 かつては婚礼の席で、媒酌人や親族が花嫁を引き立てるために黒紋付を着て、錦の帯を締めた時代もありました。今でも、お琴や尺八といったお稽古事の大会などでは、黒紋付に銀地の帯や、紫色などの袴を合わせて舞台用の衣装として着用されています。

 男性用黒紋付は羽織紐、草履。女性用黒紋付は帯、小物をうまく合わせることで様々なシーンで着用することができますね。

 黒紋付を喪服として考えると、今は葬式は洋装だから、まだ若いから要らないと思われがちですが、嫁入り衣装としての黒紋付には「家、家紋の継承」、子を思う親の気持ち「これからの人生の幸せ」を家紋に託すという大切な意味があるのです。

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