宮大工の世界

究極の大工

 世界最古の木造建造物群である「法隆寺」。1934年から半世紀に渡り、数百年に一度の「大修理」が行われたと言う。この時に、修復作業を指揮したのが伝統的な宮大工、西岡常一氏。 

 その西岡氏の唯一の内弟子であり、これまでに全国各地の寺院改修や再建、建築を行ってきた小川三夫氏。

 「技術や技法は師匠から弟子へ、口伝えで継承されるのが普通」のはずが、小川氏が師匠、西岡常一から学んだのは「技術は教えない」という事だった。師匠の仕事をひたすら見て、真似て覚え、自分の体に浸み込ませていくという。

 小川氏は、1977年に職人の元で技術を学ぶ、独自の徒弟制度による寺社建築会社「鵤工舎(いかるがこうしゃ)」を設立し、寝食を共にしながら多くの宮大工を輩出してきた。

 小川氏、曰く「法隆寺を見れば、1400年前、凄い大工がいたことがわかる。まともな道具もない時代に木工の技術に長け、これだけの建物を作ったのだから。」

本物の職人魂

 私がハッとさせられた小川氏の言葉。「機械がものづくりの中心となると、機械で処理しづらい木を使わなくなる。作りたい建物に合わせて木を選び、木に合わせて道具を作るという、職人の技術が死んでいってしまう。俺たちはただ建物を作るだけじゃなくて、人も育てる。」 

 師弟関係のなかでしか学べない技術と、何事にも真摯に取り組む、「ものづくり」への執念である。

 私も、日々、自分を見つめなおし、初心を忘れない気持ちを心の片隅に置こうと決めた日です。

前の記事

男紋

次の記事

石持ち地抜き紋